なんかうまく言えないんだけど「これはマズいな」と思った。
──まずは今回のプロジェクトが始まった経緯からお聞きしていこうと思うんですが。
Kouichi 去年だったかな。映画のDVDを観ようと思ったんですけど、最初に映画情報の予告が入っているじゃないですか。それを観ていたら「僕たちは世界を変えることができない。」っていう日本の大学生がカンボジアに学校を建てた映画があって。気になって観てみたら痛く感銘をうけたというか……なんかうまく言えないんだけど「これはマズいな」と思って。同じ地球にいるのに、こんなにも環境が違うのはマズいだろ?って。それで次の日にはもうTakashiに言ってましたからね。「おい、学校建てるぞ!」って。
──HIKARU.さんもその話を聞いていたんですか?
HIKARU.  Kouichiが「何かをやりたいって言ってる」のはスタッフから聞いてはいたんですけど、僕としては、いつかはそういうことがやりたいなとは思っていたので、やること自体に対して全然反対ではないです。むしろやりたいなって思います。でも、僕はまだ知らないことが多いので、今日は勉強させてもらいに来ました。
Kouichi 音楽やカメレオ自体、自分の為に始めたことではあるのですが、もっと「人の為になるバンド」になりたいなっていう気持ちが「♪ラララ♪ / 時給¥850」(2014年4月2日発売)の頃ぐらいから芽生えはじめて。だから、バンドというよりは人間としていろいろ考えるようになったというか。それで、何か出来ないかな?ってスタッフに相談したんです。
スタッフS 最初に聞いたときは、正直本気なのか疑問だったので、その場は「出来たらいいですよね」ぐらいにとどめておいたんです。それで、年明けに打ち合わせをしていたら、また真剣な表情で同じ話をされたんですよ。「47都道府県ツアーもあるし、その場を使って人のためになるようなことがしたい」って。カメレオは楽曲を通して社会風刺をすることがあるので、社会問題に対して真剣に考えている姿を今まで見ていると、あれから本気で考えていたんだなって思いましたし、そのときにKouichiが使っていたノートの1ページ目に「I LOVE CAMBODIA」って書いてある国際協力のチラシが挟んであって。
Kouichi そのノートって、実はファンの方から差し入れでいただいたものなんですよ。それをたまたま使っていただけなんですが、なんかすごい偶然だなと思って。
スタッフS それで、その想いを形にしたいと思いまして僕が学生時代に関わっていた国際協力サークルの鼻輪君に連絡を取ったのが、今年の年明けぐらいですね。
「カンボジアへ命の水を届ける」
──鼻輪さんは「國學院大學公認団体 国際協力サークル〜優志〜」の代表をされているわけですが、最初にお話がきたときはどう思いました?
鼻輪 ビックリしました。スタッフSさんはサークルを創設したということでお名前は知っていたんですけど、サークルが出来たのも約7年前のことなのでどういう方なのかは知らなかったんですよ。それでお話を聞いて団体と共有したら、それはやりましょうよ!ということになりまして。
──「優志」の皆さんはどういう活動をされているんですか?
鼻輪 メンバーは今だいたい20人ぐらいなんですが、全員が國學院大學の学生で、大学唯一の国際協力サークルとして活動をしています。カンボジアの人達が健康な生活ができるように、日本から物資を送るだけでなく、直接現地に行って衛生について教えたり、最近は僕達の次の世代の人達が国際協力を出来るような環境を作ろうと思って、関東地方の高校を訪問して現地での経験を伝えたりもしました。そういった「衛生環境」「衛生教育」「啓発活動」の3つを軸にして「カンボジアへ命の水を届ける」をVISIONに活動をしています。
HIKARU. 対談が始まる前にいろいろお話を聞かせてもらいましたけど、現地の人って、元々は井戸とかもなくて池の水を飲んで生活していたんですよね?
鼻輪 そうです。後は溜めた雨水を飲んで生活をしていますね。
HIKARU. その水を飲んで病気になることも多かったんですか?
鼻輪 直接的な原因になっている数値は出ていないんですけど、実際にカンボジアに行ったときに病気にかかっている人は見かけました。あと、井戸を支援するときに気をつけなければいけないのが、ヒ素なんですよ。カンボジアの井戸ってヒ素中毒になる人が結構いて。
HIKARU. そういった状況に対して、カンボジアは国として何もしてないんですか?
鼻輪 政府も何かしらのアプローチはしているんですけど、実際僕が現地で会った人の中には政府に対してあまりよく思っていない人も多いですし、ポルポトの虐殺で知識人が一掃されてしまったこともあって。
スタッフS 教師や医者を一掃してしまったことで、その政権がなくなった後も、そういった知識人がいないため、またゼロから始めなければいけなくなってしまって、時間がかかっているっていう。
Kouichi そういった歴史があることで、僕としては心にすごく残って。また知識人だけじゃなくて、子供達も惨い殺され方をしたっていう。
ミュージシャンという立場だから出来ることを考えていきたい。
Kouichi 鼻輪くん達が活動をしていくうえで、問題点とかうまくいかないこととかってある?
鼻輪 いろんな問題があるんですけど、やっぱり文化の違いが一番大きいなと思いました。それとちょっと前に有名になったんですけど、「ボクのおとうさんは、ボランティアというやつに殺されました」という記事があったんです。
──どんな記事だったんですか?
鼻輪 元々は「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました」っていう広告なんですが、桃太郎の話って、桃太郎が正義で鬼は悪なわけですけど、鬼の子供からしたら桃太郎は悪なんですよね。それをボランティアに置き換えていて。向こうの子供達はお父さんと遊んだりする時間があったのに、ボランティアという人達がやってきて、野菜を作ってお金を稼ぎなさいと言われ、お父さんと遊ぶ時間がなくなってしまったという。
Kouichi 偶然なんですが、実は僕も今そういう歌詞を書いている最中なんです。今の桃太郎の話みたいに、戦争って正義と悪の戦いじゃなくて、正義と正義の戦いなわけで、自分の正義を貫くことが悪になるっていう。だから相手が何を考えているのか、何を思っているのかをちゃんと理解しないといけないんですよね。例えば、対談が始まる前に鼻輪くんが話していた「水の味についての差」とかもそうだと思うんだけど。
鼻輪 現地の人達は池の水を美味しいと感じていて、井戸水とか浄水された水をしょっぱいと感じているっていう。
Kouichi そういったことも知らなかったし、行きたいとは思っているけどまだ実際に現地を見れていないところもあって。言っても、国単位の話だから、僕らはその全てに関われないと思うので、スタートとしては活動するための財源について何か協力ができればいいなと思っていたんですよ。でも、いろいろ調べていくにあたって継続していくことの難しさを知ったし、そもそも学生さんに自分たちからお金だけを渡すのってとんでもなく偉そうじゃないですか。お金だけ渡すというのもその場限りで終わってしまいそうで意味がないのではとも思いましたし。
──確かに正解が分からないし、結論を出しにくい活動ではあるかもしれないんですけど、その中で今回のプロジェクトはどういうものにしたいですか?
Kouichi それに関しては本音で言うと、今回の活動を通して「優志」の皆さんにいろいろ教えてもらいたいと思っていて。一緒にやるとはいえ、僕らの方が歴も全然浅いし、知らないことがやっぱり多いので。ただその中でも、ミュージシャンという立場だから出来ることを考えていきたい。鼻輪くん達が高校生に伝えているように、僕らもファンの人達やカメレオに少しでも興味を持ってくれた人に伝えることが出来ると思うんですね。そういうカメレオなりのチャリティー、カメレオだから出来ることが、ゆくゆくは出てくるんじゃないかなって思っていて。そこはきっと、学生だからこそ出来ることもあると思うんだけど。
鼻輪 そうですね。やはり僕達もプロではないし、資金とか期間の面で学生だから限界があると言われることもあるんです。でも、学生だからこそ出来る活動というのは、決してつよがりではなく出来ることがあると信じたいですし、固定概念に捕われずにいろいろなことが出来るんじゃないかなと思っています。
スタッフS もしかしたら限界はあるのかもしれないけど、その分、可能性があるよね。そういう若くて可能性のある人達の心に与えた小さな影響が、10年後、20年後の世の中を変えるキッカケになるのかもしれないし。
キッカケは「たまたま」。
Kouichi でも、なぜカンボジアだったの?
鼻輪 これは……僕よりはSさんのほうがいいかもしれないです。
スタッフS 一番の理由としては「カンボジアに偶然出会ってしまったから」なんですよね。学生の頃にそういう活動をしてみたいと思っていたときに、たまたま出会って心を動かされたのがカンボジアだったっていう。
HIKARU. そのときにたまたま出会っていた国が違っていたら、その国を支援してた?
スタッフS そうですね。
Kouichi でも確かに、俺も理由は「たまたま映画を観たから」だからなぁ。
スタッフS でも、たまたまだったけど、何かしら動くっていうことが大事なんだと思います。
──キッカケ自体はきっと何でもいいんでしょうね。
Kouichi 「僕たちは世界を変えることができない。」も、大学生が暇を埋めるために始めただけであって、それが大きなものになったっていう話だったし。僕もバンドを始めた頃はそれに近かったんですよ。活動1年目は「売れたい」とか「有名になりたい」とか、自分達のためにやっていたところもあって。でも、だんだん変わってきたんですよね。このまま、音楽を通してただ自分の言いたいことを言い続けていても、40歳になったときに寂しくなるんじゃないかな?って。じゃあ、自分の立場を活かして、何か「人」のためになるようなことをしたくなったっていう。
──HIKARU.さんもそういうところってあります?
HIKARU. あります。最初はやっぱり自分が好きだからやっていたことなんですけど、今はそれだけじゃダメになってきたっていうか。人のため、何かのためにっていうのは、やっぱりあります。ファンの人と一緒に行うこの活動を通じて、その想いが形となって、日本を越えて海外の人たちも笑顔になってくれればそれは素敵なことだと思います。
Kouichi 自分がやりたいっていう気持ちだけでやっていたら、それ以上の喜びって多分生まれないんですよ。でも、誰かのために何かをやるとなるとその喜びも倍になるというか。
微力だけれど無力じゃない。
Kouichi 鼻輪くんは、この活動をしていてやっててよかったと思う瞬間ってどんなとき?
鼻輪 僕達の支援を受けた子供達が澄んだ水を飲んでいるところを見たり、井戸を使って村の人達が笑顔になっているのを見ると、やっててよかったなと思います。教育活動に関しましては、本当に最近始めたことなので、目に見える成果という意味ではまだまだかなと思うんですけど、今後そうやって自発的に動いてくれるようになったらいいなと思います。
Kouichi そこは一番近く感じるなぁ。僕も「あの曲のあの歌詞で人生を考えました」なんて言われると嬉しい、改めて音楽のやりがいを感じる。そこが一番難しいことではあるんだけど、そうやって人の心を動かすことの難しさとか喜びの感じ方みたいなものは同じなのかなって。
鼻輪 実際にやっていて思うのは、学生の力ってそこまで大きなインパクトにはならないとは思っているんです。でも、無力ではないと思うんですよ。亀みたいに遅い速度かもしれないけど、前には進めているのかなと思いますし。だから「微力だけれど無力じゃない」と思います。それに、国際協力というのは種まきみたいなもので、芽が出ない場合もあるんですよね。でも、芽が出れば花は咲くと思いますし、今回のことも一つの種まきなのかなと思います。
──地道な作業ですけど本当に大事なことですよね。
鼻輪 実は、今の言葉は「優志」のメンバーが言ってたことなんです(苦笑)。思っていることは同じではあるんですけど、良い言葉だなと思っていたので使っちゃいました。
──正直ですね(笑)。今回のプロジェクトで集まったお金はどういう形で使われるんですか?
鼻輪 今回お預かりした全額のお金で、来年の春に物資の支援が出来ればと思っています。「優志」と提携している「AAC21(特定非営利活動法人 21世紀のカンボジアを支援する会)」の方々にもご協力を頂いて、具体的な支援としては、小学校にトイレや手洗い場を作ったり、あとはちょっとした水飲み場が作れればいいなと思っていて。その中でも優先順位として高いのはトイレです。
──トイレですか?
鼻輪 はい。最近カンボジアではトイレのニーズが高いんです。あと、ただ水を送るわけではなくて、水の環境を改善するといろんな問題が解決できるんです。例えば、トイレ一個を支援するだけで、学校に子供がたくさん来るようになるとか。女の子が学校にトイレがないから恥ずかしくて行かなくなっちゃうことがよくあるんです。他にも尊厳の問題もありますし、例えばトイレの有無で犯罪に巻き込まれてしまうケースもあって。なので、そのひとつを改善するだけで、良い歯車が絡み合って好循環を生むことが出来るんです。
Kouichi なるほどなぁ。今日は本当に勉強になりました。今回はカンボジアですけど、もっと大変な国もあるだろうし、それを知ろうとすることが今は大事なのかなと思っていて。そこからの派生の波をみんなのところまで持って行きたいですね。僕らが動いたことが何かのキッカケになって、もちろん強制ではないんですけど、じゃあ私は別の支援をしてみようって思ってもらえると嬉しいし、そうやって繋がっていけばいいなと思います。
──それでは対談を締めさせていただこうと思うのですが……
鼻輪 あの、出来れば最後にお見せしたいものがありまして……。4月から新入生が入ってくるんですけど、その歓迎のときに流そうと思っている映像があって、それを最後に見てもらえるといいなと思っているんですが……。
Kouichi おお! 見たいです。言ってみれば僕らも新入生なので。
(インタビュー:山口哲生)
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